錯視の公共空間への活用-イメージハンプの盛り上がり効果

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科研費(基盤研究(C)「錯視の公共空間への活用-イメージハンプの盛り上がり効果」/2011年〜2013年


【研究概要および研究成果】


 本研究の特長は、錯視効果の公共空間への活用を目的に、道路上に設けたハンプに活用しようとするものである。近年、錯視によって引き起こされる交通事故が多発しているなか、錯視効果の活用で交通事故対策に寄与できないかと考え、現在、他の研究機関の協力体制のもとで取り組んでいる研究である。

 ハンプとは、速度抑制を目的として開発された道路上に設けられている凸型断面の盛り上がりのことで、同様の目的で路面に立体的に見せかけた突起のないハンプのことをイメージハンプという。ハンプには、円弧型ハンプ、台形型ハンプ、サイン曲線型ハンプなどがある。またイメージハンプは道路脇の縁石や交差点の中などに設置されている突起のない平面の図柄で、錯視効果で立体的に見せかける手法である。

 北欧では、信号機のないロータリー交差点が数多くあり、そこには台形型ハンプとの併用で速度抑制効果を図るシステムが導入されている。中央部の円形スペースにシンボルサインとしてのモニュメントが設置され、ロータリーの手前に台形型ハンプが設置されている。またハンプの頂点平坦部は歩道になっているため速度抑制の心理的作用が働き、習慣的に速度を落とすことになる。

 日本では、北欧のようなロータリー交差点とハンプのシステムが併用された事例はないが、佐賀大学の清田勝氏を中心とした研究グループにより様々な取り組みがなされている。彼らの研究結果によると、高さ8cmの頂点高さのサイン曲線型ハンプが速度抑制効果および騒音問題の点から総合的に優れていることが明らかにされている。その一方で住宅街での衝撃や騒音等の問題も浮上しており、ハンプの適正高さを少し低くし、錯視効果を利用してより高く見せることで速度抑制効果を図る方法が検討され、その第一段階での研究としてストライプ型イメージハンプの走行実験を以下の内容で行った。


ストライプ型イメージハンプの走行実験とその後の展開

 ストライプ型イメージハンプモデルでの盛り上がり効果の確認後、積水樹脂株式会社滋賀工場の実験道路で走行実験を行った。イメージハンプのサイズは、幅4m×奥行き長が16mである。実験では、ワゴン車を20km/時から30km/時の速度で走らせ、映像でその様子を撮影し、被験者の感覚的印象で盛り上がりの効果について検証を試みた。被験者の感覚的な印象は約50cm前後の高低差を捉えることができるほどの効果が確認できた。視覚的印象を考察すると、盛り上がり効果に有効な表現要素として、プログレッシブ間隔の縞パターンと道路幅が狭くなっていく感覚を連想させる進行方向に設けた縦のラインとの組み合わせが盛り上がり効果を高めたと推測される。また交互に繰り返される遠近錯覚と逆遠近錯視のパターンの組み合わせも有効に働きアップダウンの効果に大きく影響したと考えられる。

 その後、奥行き4mのサイン曲線型ハンプに応用した融合型の新型ハンプの視覚的印象を確認する走行実験(佐賀大学の構内)を行った。ところが予想に反し盛り上がり効果は得られなかった。その要因と考えられるものは、走行中の視点の高さと道路上の図柄を見る時の視野角(見かけの奥行き長)が主な要因と考えられる。特に奥行きが短い場合の図柄は、道路を横切る細い線としか認識されない。その後、斜めのラインの有効性も確認されており、今後、さらにイメージハンプの盛り上がり効果に関与すると考えられる表現要素を様々な角度から検証していく予定である。今後の展開として、前述の斜めのストライプパターンを奥行きの短いサイン曲線型ハンプに併用した新型ハンプの検証実験を行う計画である。また速度超過が予測される直線道路への対策として、これまで実験を重ねてきたストライプ型イメージハンプに衝撃や音刺激を併用した新型ストライプを実験道路に施工し本格的な走行実験を行う計画である。


●上記研究テーマの研究成果として発表した論文(現在まで)

【論文/国際】「Application of visual illusion effects to HUMP on the road」/Conference on Asia Society of Basic Design and Art in Yunlin 2011(査読付)  

       /PP.64〜68/2011年8月

【論文】「イメージハンプにおける錯視効果の可能性に関する検証」/日本基礎造形学会論文集・作品集2010「基礎造形019」(査読付)/PP.21〜24/2011年3月

【講演論文/招待】「錯視効果の交通安全システムへの応用-イメージハンプの盛り上がり効果-」/アジア景観デザイン学会/2ページ/2012年6月


  • ※2011年度から2013年度までの科研費:直接経費/4,200,000円,  間接経費/1,260,000円,  総計:5,460,000円(2013年度の予定分を含む)。また研究内容として、それ以前の予備実験で行った研究内容が含まれています。

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