錯視効果の交通システムへの活用

この記事の評価: 0 / 5

星を無効星を無効星を無効星を無効星を無効
 

錯視効果の芸術・デザインへの応用とラウンドアバウト交通システムへの活用

 

1.研究の背景および目的

 

 信号機のない円形の交差点であるラウンドアバウト図1は、日本ではなじみの薄い交通システムである。西欧諸国では日常的に活用されているが、左折優先の交通ルールが弊害となり日本では普及しにくい現状が続いていた。昨年秋の法改正に伴い、左折車両の優先権から中央部の走行車両が優先権を持つことで、急速に普及する可能性が高くなった。本研究では、今後の設置を見据えたラウンドアバウト全般の交通システムについて、1)ラウンドアバウト侵入時の錯視効果による速度抑制方法、2)ラウンドアバウト円形スペース内のシンボルサイン、3)ラウンド アバウト進入時の回転方向を示す誘導サインの3つの提案内容について図解とともに解説する。

round01

図1:ラウンドアバウト設置計画図

2.研究内容(デザイン提案の内容)

 

1)ラウンドアバウト進入時の錯視効果による速度抑制方法

 

 ラウンドアバウトは信号機のない交差点であるため、自主的に徐行ないし静止を促すための速度抑制方法として錯視効果を活用したイメージハンプを設置する。図2のイメージハンプは、ジグザグパターンによって凹凸効果を演出する表示パターンである。車輪が走行する位置には∨字パターンが設けてあり、視覚的にへこんで見える錯視効果を活用している。また音の鳴るイボ付きラインを設けることで錯視効果に加え、音と衝撃で速度抑制効果を図るデザインである(特許出願中)。

 round02

図2:交差点手前に設置するジグザグパターンイメージハンプ

2)ラウンドアバウト円形スペース内のシンボルサイン

 

 これまでの設置事例の多くは、地域のシンボルとしての象徴的な形を立体化したものが多い。しかし、ラウンドアバウト円形スペースは交差点であるため誘導サインとしての役割を担っている。それぞれの入り口からの形や色付けによる印象付けは行き先決定の重要な要素となる。また地域の景観美に大きく影響するラウンドアバウトの設置計画は、これまでの路面標示法方法ではなく、芸術、景観デザインの視点に立った学際領域による新たな研究開発が必要である。これらの要素を含む造形表現の事例として、多視点による異なる印象を重複した多義立体的な立体視覚表現(視点限定造形とも言う)が適している。図3は視点、その表現事例として取り上げた福田繁雄の「アンコール」という立体造形作品である。

 展開方法はシンプルな形状からのユニットの増殖構成の手法で展開していく。図4のように、シンプルな形からの発想をもとに、色による組み合わせ、傾斜、拡大、縮小、配置方法をユニットの増殖法でバリエーション展開し、システム的に表現要素の構築を図ることでアイディアを広げていく。

 

round03

図3:シンボルサインの参考事例としての
視点限定造形事例「アンコール」/福田繁雄1976年

 

round04

図4:4方向から方向見た時に異なる印象に見える
シンボルサインの形状事例

3)ラウンドアバウト進入時の回転方向を示す誘導サイン

 

 車両の進行方向等を誘導するサインには視点移動造形の考え方が有効である。図5のように蛇腹構造による誘導サイン、棒状、四角形、三角形の断面形状の連続パターンの配置による誘導サインや蛇腹構造による誘導サインなど、視点移動に伴う視覚の変化に重点を置いたアイディア展開が望ましい。 

round5

図5:4方向から方向見た時に異なる印象に見えるシンボルサインの形状事例

まとめ

本研究では、ラウンドアバウト交通システムについて、進入時の速度抑制効果を図るイメージハンプ、回転方向を示す誘導サイン、地域のシンボルとしてのシンボルサインのトータルなデザイン構築のプロセスを具体的な方法論でまとめてみた。急速に増えることが予測されるラウンドアバウト。本研究の成果が、日本の道路環境づくりの起爆剤となり、美しく機能的な交通システムとして広がっていくことを切に望む。

*本研究はJSPS科研費20242003の助成を受けたものです。

Study